めぐり会い 感想
第1巻第6話「めぐり会い」(秋田文庫)
めちゃくちゃ好きな話きた。
先生の美しいキスシーンの話。
昔の友人に会うと言って出掛けるブラックジャック。何か怪しいと女の勘が働き、ついていくピノコ。
話は十数年前に遡る。
ブラックジャックは研修医時代に同じく女医の恋人がいた。彼女はめぐみといった。めぐみは子宮癌におかされており、死は目に見えていた。周りも手術は無駄だと諦めていた。
しかし、上司の反対を押し切ってブラックジャックは恋人の体にメスを入れるのだった。
子宮と卵巣をすっかりとってしまい、めぐみは女として生きることをやめ、男装して船医となり世界を回る。
今回ブラックジャックが会う友人というのは、女を捨てためぐみであった。
ピノコにはめぐみのことをめぐみの兄だと誤魔化し、2人は束の間、思い出を語り合う。そしてまたそれぞれの道へと歩き出す。
おしまい。
とにかくピノコの嫉妬嫉妬嫉妬が愛らしかった。でも先生に恋人がいたなんて聞いてないよね。私も嫉妬した。
めぐみに対しても、ピノコのおくたん主張が強い。娘って言われて腹立ったんだね。笑
先生もめぐみさんも、もうお互いに気持ちがないと言ったら嘘なんだろう。
だけどあのキスが、、、あの瞬間が、、、永遠だから、、、。
その気持ちを胸にこれからも2人は別々に生きていくんだろう。美し過ぎて何も言えない。こんな愛し方、私にはできる気がしませんな。
先生のストーカー行為やめぐみさんを誰にも触らせないという変態治療はさておき、先生は本当にめぐみさんのことが好きだったんだね。好きだからどんな形であっても生きていて欲しかったんだね。先生のエゴもたっぷりなんだけど、めぐみさん自身が生きたいと思っていたから、めぐみさんにとって先生は命の恩人。先生に救ってもらった命だから、めぐみさんの中で先生は一生消えない存在となるんだ。
どうでもいいけど先生って美人好きだよね。
今の時代、生殖器を取ったから女では無くなる、という考えはもうほとんどない。
現代だったらもっと違った風になってたんだろうな。なんて思ったり。
ときには真珠のように 感想
第1巻第5話「ときには真珠のように」(秋田文庫)
またまた有名回。そして神回。本間先生が登場する回は好きな話ばっかりだ。
【あらすじ】
本間先生から謎の小包みが届き、不思議に思ったブラックジャックは本間先生を訪ねる。
本間先生は老衰で寝たきりの中、ブラックジャックに自分の医療ミスを告白する。
子どものブラックジャックを手術した時、ブラックジャックの体の中にメスを一本置いてきてしまったこと。
己の保身のためにすぐには手術し直せなかったこと。
7年経ってようやく手術したとき、メスはカルシウムの鞘で包まれていて、7年間ブラックジャックの体を守っていたこと。
ブラックジャックに打ち明けてすぐに本間先生は危篤状態に陥る。
ブラックジャックの緊急手術も虚しく、本間先生は死んでしまう。
そしてあの有名なコマ。
「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね...」
【感想】
最後の一言、痺れるなあ。
医療の限界を知り、悔し涙を流すブラックジャック先生。それだけじゃなく、恩師を失ったこと自体とても悲しかったんだろうね。
本間先生は医療ミスをしたけれど、子供の頃のブラックジャックは生き延びた。
ブラックジャックは完璧な手術をしたけれど、本間先生は死んだ。
この対比がとても鮮やかに描かれていると思った。
医療は自然の摂理に抗う行為なのかなと改めて考えさせられる。いやいや、医療そのものはとても素晴らしいのだけど。線引きがとても難しい。
しかしながらこの本間先生の言葉というか感性は、いつまでも持ち続けなければならないものだなあと思う。
ところで今回冒頭にちょこっとピノコが登場する。時系列的に後半のお話なのか、ピノコの作るご飯がおいしそう。初期ピノコはお料理できないから。
「ピノコ、ローマ字半分くやい読めゆ」て言ってるの可愛い。先生が文字とか教えてるのかなあと思うと先生も含めて可愛い。
【追記】
アニメ版には後日談があった!
本間先生の墓参りを終え、海岸に立つブラックジャック。
「あなたは正しいのかもしれない...しかし私は」
「医者だ」\タッタッタータ/(めっちゃかっこいい音楽)
そう言って、あのカルシウムで覆われたメスを海に投げ棄てるのであった。
本間先生の「おこがましいとは思わんかね」の発言に対するブラックジャックのアンサーなのだろうか。おこがましい行為だろうが、自分はこれからも医の道を極め続けるぞ、という。先生の覚悟が見えた。
思い出の品捨てんでもええやろ、とは思ったけど。
人面瘡 感想
第1巻第4話「人面瘡」(秋田文庫)
このお話もかなり有名。多くの人のトラウマになったであろう回。
【あらすじ】
顔が腫れあがり、化け物のようになってしまった男が元の顔に治してくれとブラックジャックを頼る。しかもこの人面瘡は自分の意思に反して喋るのだという。ブラックジャックは人面瘡など信じないという様子で顔の整形手術をする。
後日、治療代を受け取りにブラックジャックが男を訪ねると、男は自分が殺人犯で指名手配されていることを明かし、ブラックジャックを殺そうとする。男がピストルを向けた瞬間、男の顔はムクムクと腫れ上がり、再び人面瘡が現れる。パニックになった男は崖から落ちて死亡する。
【感想】
なんとも恐ろしい話。
人面瘡初登場の大きなコマ、怖すぎて忘れられない。ビビりながら読んでた。ブラックジャック先生のすごいところは、化け物みたいな顔の患者が来ても決して気持ち悪そうにしないこと。人面瘡の顔を見て、驚きはしていたけど嫌な顔はしていない。(人面瘡、という言葉に怪訝な表情だったが、それはフィクションのような病名に対してのリアクション。)
当たり前のことかもしれないけど、こういうお医者さん、いいな。
にしても先生はやっぱり自らを危険にさらしすぎだよ。笑
殺人犯に向かってお前は殺人犯だろうとか言ったら当然殺されるって。しかもめっちゃドヤ顔で言うし。
このお話、最後のコマもいい味出してる。
「もしかしたらこの男の良心の顔だったのかもしれない」
後ろ姿だからどんな顔をして言っているのか分かりかねるが、読者の想像に委ねるということかな。
虚無顔だろうなあ。
自分が治さなければ男は死ななかった(かもしれない)のだから。
今回はピノコがいなくて良かったかもしれない。ピノコがいたら患者の顔見て怖い怖いって喚きそう。あれ、OVAではピノコいたはずだけどどうなってたんだっけ、、、。
畸形嚢腫 感想
第1巻第3話「畸形嚢腫」(秋田文庫)
言わずと知れた、あまりにも有名なピノコ誕生回。あらすじを書くまでもないだろう。
【あらすじ】
夜中にブラックジャックのもとに運ばれてきた急患は、腹に大きな嚢腫を持っていた。
その嚢腫の中に人間の臓器が一揃い入っていたから、ブラックジャックが嚢腫から臓器をぽいぽいっと取り出して、人間を組み立ててしまう。そんな話。
そんなこんなで誕生したピノコは、実の家族にも疎まれ、そのままブラックジャックの家に住みつくのである。
【感想】
初めて読んだのは私が小学生のとき。かなり衝撃的だった。大学生になって嚢腫を習ったとき、
とちょっと興奮してしまった。不謹慎で申し訳ありません。
嚢腫の中に髪の毛や歯が入っていることはあるらしいのだけれど、人間の臓器ひとそろいは聞いたことがない。
先生が患者(ピノコの実の姉)にピノコを紹介する時はなんだか生き生きしてた。きっと患者が喜ぶとか思ったのかな。しかし、その反応は全く逆で...
「こんな子 私の妹じゃありません!!」と実の姉に言われて見捨てられてしまう。
先生は自分のしたことが正しかったのか悩んだだろうな。最後のコマの先生とピノコの後ろ姿があまりにも寂しい。でも、この瞬間、先生はピノコをそっと抱き寄せている。その背中に、ピノコの一生に責任を持つという覚悟が見えた。
ブラックジャックのお話って最後のコマに哀愁漂っている回多いよね。
ところでブラックジャックOVAでもカニ先生が出てくるのだけど、劇画タッチのアニメなのに漫画に忠実なフォルムで面白かった。
春一番 感想
第1巻第2話「春一番」(秋田文庫)
【あらすじ】
以前、ブラックジャックによる白斑症の手術を受けたJK(JCかもしれない)がブラックジャックのもとを訪れて、術後何かおかしいという場面から始まる。
(漫画の中では白斑症と言っているがおそらく角膜変性症かなにかのことで、角膜に白斑ができたのだろう。
白斑症とはメラノサイトが何らかの原因で消失したり減少したりすることでメラニンを作れなくなり色が抜ける病気で、皮膚や口腔内に白斑ができるそう。
そんな細かいことはどうでもよくて、目の手術までできるブラックジャック先生がすごい。)
JKは角膜移植を行ってから、見知らぬ男の人がボーっと見えるのだと言う。
しかもイケメンらしい。JKはだんだんその幻の男のことが気になり始める。なんなら片思いが始まる。
幻の男は移植のドナーが見た殺人犯であった。ドナーが生前男に殺されて、ショックで(?)角膜に男の姿が焼き付いた、というなんともSFなお話である。
JKは街で偶然その殺人犯を見かけ、声をかけてしまう。なんたって好きになっちゃったんだから。毎日同じ人の幻影を見て、実際に出会ったら運命の人って思っちゃうよね。
JKも殺人犯に殺されそうになったが、すんでのところでブラックジャックが助けに来る。
ブラックジャックは落ち込むJKを励まし、目の再手術をするのであった。
【感想】
カテゴリー・胸キュンといったところか。先生が女性に優しいかっこいい回。ビジュアル的にもイケメンと言われていた殺人犯より先生の方が端正なお顔だしね。(主観)
JKの描いた似顔絵で犯人特定して助けに入る先生すごいな。そして間がいいね。
そしてやっぱりメスで攻撃してた。
失恋したとわんわん泣くJKに対して
「そうがっかりするなよ これは春一番さ」
「これからほんとうの春がくるんだ」
と元気づける先生の横顔がとっても綺麗。私のお気に入りシーン。
最後のページでタイトル回収するのも鮮やか。
JKはこのあと先生に恋をすると予想。(妄想)
にしても手塚先生の描く女の人は綺麗だな。
医者はどこだ!感想
第1巻第1話「医者はどこだ!」(秋田文庫)
アニメの第1話にもなっているので有名な話でしょうか。アニメではピノコが出てきますが原作では全く登場しません。
【あらすじ】
世界一の実業家であるニクラ氏の息子・アクドが派手に自動車事故を起こすシーンから始まる。ニクラは息子を助けようと腕のいい医者を探し回るも、どんな名医も匙を投げる始末。
なんせ「頭の骨が折れて 首が折れて 肺がつぶれて 胃がひしゃげて 腸がねじれて うんちがはみ出して」いるのだから。ほぼ死んでますね。
そこに現れたのがブラックジャック。
ブラックジャックがいうにはアクドを助けるためには別の肉体が要る、と。そこでなんの罪もない一般市民のデビイに白羽の矢が立つ。事故のとき側にいたというだけで。裁判もむなしくデビイはアクドのために手術室へ連れて行かれてしまう。
ブラックジャックはニクラに言う。
「ひとつ いっとくが ニクラさん おれは そいつを助けるが 助けたあとは 責任はおわないぜ」
ブラックジャックはこういうのよく言ってる気がする。
こういう、治すは治すけどあとはどうなっても知らんよ的なこと。
手術は成功。デビイはアクドのためにほとんどの肉体を提供して死亡。
しかしその後すぐにアクドは行方不明になってしまう。
手術後のアクドは、アクドの顔そっくりに整形されたデビイだったのだ。つまりブラックジャックが行った手術はアクドの蘇生ではなくデビイの整形手術。当然、本物のドラ息子アクドは死んでいる。
ブラックジャックはデビイに大金を渡し外国へ逃げるように言う。(アクドの顔で街をうろつくとニクラパパにばれるから)
【感想】
まず初めの感想、この回の先生なんだか若い。
診察中のコマもなんだか顔がスレてる。気がした。
いやかっこいい。
これぞブラックジャック、というストーリー。
文庫版の収録の順番はどう決めたのか知らないけれど、ブラックジャックという男が分かる、1話にふさわしいお話だったと思う。
冷酷なように見えて、弱者や良識者にとことん優しい。そして金は取るところから取る。
(今回の手術費用は明かされなかったけど、ブラックジャック先生に依頼する前の有象無象の医者は10億円でどうかと聞いているからそれよりはたくさん取ってそう。)
アクドから受け取った報酬を、そのまんまデビイに渡したんだろうなあと勝手に想像。
手術が成功して、大感謝するニクラパパに対し
「じゃ おれの 仕事はこれですんんだな あばよ」
と言って立ち去るブラックジャック先生。
大仕事をしたのに淡々と帰っていく感じがとても先生だ。あばよって、、、かっこいい。
手術時間は約5時間、早い。