ときには真珠のように 感想

第1巻第5話「ときには真珠のように」(秋田文庫)

 

またまた有名回。そして神回。本間先生が登場する回は好きな話ばっかりだ。

 

 【あらすじ】

本間先生から謎の小包みが届き、不思議に思ったブラックジャックは本間先生を訪ねる。

本間先生は老衰で寝たきりの中、ブラックジャックに自分の医療ミスを告白する。


 

子どものブラックジャックを手術した時、ブラックジャックの体の中にメスを一本置いてきてしまったこと。

己の保身のためにすぐには手術し直せなかったこと。

7年経ってようやく手術したとき、メスはカルシウムの鞘で包まれていて、7年間ブラックジャックの体を守っていたこと。

 

ブラックジャックに打ち明けてすぐに本間先生は危篤状態に陥る。

ブラックジャックの緊急手術も虚しく、本間先生は死んでしまう。

 

そしてあの有名なコマ。

「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね...」


 

 

【感想】

最後の一言、痺れるなあ。

医療の限界を知り、悔し涙を流すブラックジャック先生。それだけじゃなく、恩師を失ったこと自体とても悲しかったんだろうね。

 

 

本間先生は医療ミスをしたけれど、子供の頃のブラックジャックは生き延びた。

ブラックジャックは完璧な手術をしたけれど、本間先生は死んだ。

この対比がとても鮮やかに描かれていると思った。

医療は自然の摂理に抗う行為なのかなと改めて考えさせられる。いやいや、医療そのものはとても素晴らしいのだけど。線引きがとても難しい。

しかしながらこの本間先生の言葉というか感性は、いつまでも持ち続けなければならないものだなあと思う。



ところで今回冒頭にちょこっとピノコが登場する。時系列的に後半のお話なのか、ピノコの作るご飯がおいしそう。初期ピノコはお料理できないから。



ピノコ、ローマ字半分くやい読めゆ」て言ってるの可愛い。先生が文字とか教えてるのかなあと思うと先生も含めて可愛い。




【追記】

アニメ版には後日談があった!



本間先生の墓参りを終え、海岸に立つブラックジャック

「あなたは正しいのかもしれない...しかし私は」


「医者だ」\タッタッタータ/(めっちゃかっこいい音楽)


そう言って、あのカルシウムで覆われたメスを海に投げ棄てるのであった。

本間先生の「おこがましいとは思わんかね」の発言に対するブラックジャックのアンサーなのだろうか。おこがましい行為だろうが、自分はこれからも医の道を極め続けるぞ、という。先生の覚悟が見えた。

思い出の品捨てんでもええやろ、とは思ったけど。